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第8回 石川美食会 ル・グリル ドミニク・ブシェ カナザワ

第8回 石川美食会のご案内

日時: 3月2日18時-20時
場所:ル・グリル ドミニク・ブシェ カナザワ
〒920-0961 石川県金沢市香林坊1丁目 一番一号 2F・3F TEL 076-208-6840

第8回石川美食会のRECIPE
今回は能登島の高農園さんにご参加いただき、ヴィラ・デラ・パーチェの平田シェフとル・グリル ドミ ニク・ブシェ カナザワ吉田シェフ、パティシエの辻口シェフ、マルガージェラート柴野シェフがコラボで創作しました。前菜2品のあとにパスタ、魚、肉、デザートのコース。前菜の1品目は能登115を使っ たコラボ、2品目は平田シェフによる、高農園さんの野菜を使った一皿、3品目も平田シェフによるパスタ、 4品目は魚料理で魚は平田シェフ、ソースは吉田シェフの一皿、5品目は吉田シェフによる能登牛、6品目は辻口シェフ、柴野シェフによるデザートでした。また日本酒とのペアリングをあすかりんがプロデュース。第11代大樋長左衛門氏の器、輪島塗りの桐本 泰一氏が食に彩を添えました。ここでしか体験できないひと時をお楽しみいただきました。

Special Thanks
VILLA DELLA PACE http://villadellapace-nanao.com/
ル・グリル ドミニク・ブシェ カナザワ http://www.legrill.jp/
NOTO 高農園 https://www.taka-farm.com/
MALGA GELATO  http://shibanotaizo.com/
「雅珠香の美味献立(こんりゅう)」http://food-japon.com/
大樋美術館 http://www.ohimuseum.com/
輪島キリモト http://www.kirimoto.net/

案内PDF

 

今回のこだわりの人たち

NOTO高農園
高 利充
TOSHIMITSU TAKA

Profile
石川県金沢市生まれ。2000年、脱サラして妻の博子さんと共に能登島に移り住み、有機農業をスタート。ミネラル豊かな約20haの赤土畑で有機JASやエコ農業に取り組み、西洋野菜、伝統野菜、ハーブなど300種類以上の農産物を生育している。主な取引先は全国各地のフレンチやイタリアンのレストラン。

自然の力とアイデアを駆使して、シェフの「ほしい」を叶えたい

–農業を始めたきっかけは?

「能登島で畑をやる人を探している」との話をいとこから聞き、以前から興味を持っていた農業を始めることにしました。当初は作った野菜を主にスーパーに出荷していましたが、今から13年ほど前に大きな転機があったんです。七尾市の食育イベントで三国清三シェフとの出会いです。三国さんに「普通の野菜しか作ってないの?」と聞かれ、「えっ、普通の野菜って何ですか?」と逆に聞き返すと、三国さんのお店に招かれ、当時のスーパーには並んでいなかった国産の希少野菜や西洋野菜など、いろんな野菜を教えていただきました。そこで「こういうの作らない?」と声をかけていただいたのが、現在に至る出発点です。

その後、いしかわ農業総合支援機構が開催する「いしかわ百万石マルシェ」に第1回から参加しているおかげで、いろいろなシェフとのご縁ができました。現在は東京を中心に北海道から鹿児島まで全国のシェフとのおつきあいがあります。もともと自分自身”食べること”が大好きだったので、作物がどういうふうに使われるのかを知れば知るほど、料理人の期待に応えたいという気持ちが増していき、「レストランに出荷する」という今のスタイルになっていきました。

–どんな野菜をどんな方法で作っているんですか?

現在は、約20ヘクタールの畑で300種の野菜を7人で作っています。テーマは「伝統とモダン」。地域に伝わる伝統野菜と新しい品種の野菜です。伝統野菜とは、いわば”野菜の絶滅危惧種”のようなもの。石川県だと、加賀太きゅうりや金時草、中島菜。妻の出身地の鹿児島だと薩摩白なす、滋賀県だと日野菜カブとか。シェフの出身地の数だけいろんな野菜が増えていくんです(笑)。僕たちが作って発信することで、伝統野菜を使うシェフが増え、認知度がアップして寿命が伸びればいいなと思いながら作っています。

当初からやり続けているのは、農薬を極力減らした自然農法。消費者の安全安心はもちろん、作り手の僕たちも健康に長く農業を続けていきたいからです。除草剤、殺菌剤、殺虫剤を使っていない畑には、ご覧の通り普通に雑草が生えてきます(笑)。でも、こうして畑の脇で採れるハコベやタネツケバナも、商品として出荷できるんです。この方法が「生態系を守る」ことにつながっているのも嬉しいですね。

食味をよくするためには、水はけや肥料持ちのよい「団粒構造」の土に、緑肥(栽培した食物を腐らせずに肥料にしたもの)や有機質を含ませるなど、野菜に居心地の良い環境づくりを工夫しています。また肥料をどの時期に効かせるかによっても、味を向上させることができます。生育初期に必要な肥料を早めに入れ、追肥でその時期に必要な肥料を入れる。もしくは時間差で効くように、動物性・植物性の肥料の配分を考えていく。畑には、チッソ・リン酸・カリをはじめ、12の重要成分がありますが、そのバランスが整っていないとうまく生育しない。なので、毎回、各畑ごとに土壌分析をして、対策を立てています。

こうした知識を、代々続く農家さんは親から受け継がれるのでしょうが、僕らはまさに手探りでいろんな方に教えていただいて続けてきました。土壌のことは穴水町の専門家の先生に習ったり、味や形はシェフたちに「これでいいんですか?」と聞きながらやってきましたね。

–やはりシェフとのコミュニケーション(対話)がとても重要なんですね。

僕たちのお客様はエンドユーザー(食べ手)ではなくシェフ。そのフィルターを通して作っている野菜が多いので、シェフが思う料理に仕上げるために、じゃあ僕らはどう作ればいいのか、サイズや色はどうするか、苦味が引き立つようにするのか、そういうことをお話しながら作っています。例えば、紅芯大根って普通は大きいサイズなんです。なのに、「小さくして色が付くように育ててほしい」とか言われる(笑)。同じ野菜でも、シェフの要望に応じて肥料成分を変えたりもしています。「色味は落ちても旬のものがほしい」という方もあれば、「旬のものがほしい」とタイミングもそれぞれ。みなさんきめ細やかな要望がありますね。

でも、そんなシェフたちは必ず畑を見に来られます。忙しい時間を割いて、全国や海外からも能登島にやって来て、熱心に畑を観察していかれる。その情熱にふれると、やはりシェフが「ほしい」というものは叶えてあげたくなる。「こんな野菜ないの?」と言われたら、「あ、植えます」と言ってしまうんです(笑)。

 

 

VILLA DELLA PACE
平田 明珠
MEIJU HIRATA

Profile
東京都練馬区生まれ。大学卒業後、都内イタリア料理店で研鑽を積む。2016年石川県七尾市へ移住し、「Villa della Pace」をオープン。コンセプトは「能登だから”できること、“能登だから”作れる料理」。能登をテーマに、文化・歴史・景観を体現する料理を提供している。
生産者と料理人を結ぶ「能登F-Fネットワーク」理事、RED U-35 2017 シルバーエッグ、RED U-35 2018 ブロンズエッグ、Barilla Pasta World Championship 2018 日本代表。
http://villadellapace-nanao.com/

能登の濃厚な文化と日々の暮らしが
斬新な発想を生み出してくれる

–能登で開店することになったきっかけは?

以前働いていた東京のレストランで能登のカキを使っていて、どんな場所で作られているのか一度見てみたかったんです。それで、知り合いの能登の漁師さんにいろいろ案内してもらって、「能登ってすごいいいな」と直感的に思いました。ちょうど、地方のレストランに興味を持ち始めた時期で、さまざまなユニークな世界観を打ち出している店にすごく惹かれていたんです。「自分も地方でやってみたい」と考えたとき、真っ先に浮かんだのが能登でした。

最初は能登の食材から入り、やがて景観にも惹かれていきました。特に中島周辺から見る能登島や七尾湾がすごく好きなんです。豪快な荒海の外浦とは全く違った、波のないおだやかな風景がいいですね。またそこに住んでいる人もいい。よく能登の人は優しいと言われますが、初対面からみんな優しいわけじゃない(笑)。でも入り込むとすごくよくしてくれる感じが…なんかそんな人間臭い感じが好きですね。自分がここに住んでやっていくと考えたとき、すごいしっくりくるんじゃないかなと自然に思えました。「北陸の冬は都会から来る人には精神的にキツイ」とも聞きましたが、僕は全然大丈夫ですね。冬になると食材は美味しくなるし、嬉しいぐらいです(笑)。

能登に移住して店を開くと決めてからは、いろいろと下調べしました。人の行き来や住んでいる人のライフスタイル、能越自動車道と里山街道からのアクセスなど、レストランを営むにあたっての”地の利”があるかを検討しました。七尾の知人に協力してもらいながら、金沢エリアから1時間ほどで来られる現在の場所を選びました。

–お店のコンセプトは「能登だから”できること、“能登だから”作れる料理」。どんなところでそれを表現しておられますか?

地元の歴史や文化、景観を料理に盛り込みたいと考えていて、なるべく地元のものを使いたいと思っています。ほどんどの料理に高さんの野菜は欠かせませんし、魚介は信頼できる地元の魚屋さんにおまかせしています。でも、必ずしも”すべて地場産”にこだわっているわけではありません。例えば、能登には北前船貿易で栄えた歴史がある。北海道と交易する昔ながらの海産物店が残っているので、昆布なども使用します。一方、器はほぼ能登のものになってるかな。こちらに来てから、輪島漆器や能登島ガラスなどの素晴らしい作家さんたちと知り合えたので、紹介も兼ねて使っています。「輪島キリモト」に漆器のパスタ皿をオーダーしたり、作家さんとのコラボレーションも楽しい。自分で山や海辺で探してきた木や石も使いますし(笑)。やはり地元の食材は地元の器とすごく相性がいいですね。

–能登に来られてから自分の中で何かが変わったと感じますか?

作る料理はかなり変わりました。より”自然寄り”になっているなと。本当はもっと寄せたいんですが…(笑)。地元の素材から発想が引き出されるのはもちろんですが、それよりも大きいのが”生活”からの発想。畑や山に行くことが日常生活の一部になっているので、そこからが一番なんかこう…発想が出てくるんですよね。これまでは、料理本を読んだり、どこかのレストランに食事に行って刺激を受けたりだとかが多かったんですけど、今はそういうことより、やはり生活から自然に出てくる発想が多くなりましたね。

農家さんと畑で話しながら、生えてる野菜を取ってその場で食べさせてもらうような日常も得がたい体験です。普通に流通しないような野草や野イチゴとか、能登に来て初めて教えてもらったものが多くて。そんな今まで使ったことがないものを料理に使うのも、すごく楽しいですし。誰もやってなかったことがやれたり。そういう自分だけの世界を作れるのが面白い。

–近年、地方のレストランが増えていますが、その理由はどんなところにあると思いますか?

端的にいうと、食材がいいからでしょうね。僕の場合は、都会にいると全国からいろんな食材が手に入って、何でも使えるのがかえって物足りなかった。逆にそれが自分の料理の幅を狭めている感じがあって。扱う食材の範囲やテーマが決まっていると、その中でいろいろと発想が出やすいんです。それに地方にいると、都会では考えられないところから、料理の発想があったりする。山で動物と偶然出くわして、その肉を使って、近くに生えてる野草と一緒に一皿作ったりとか。食材の組み合わせや盛り付けのイメージまでもらえる。”その場所でしかできないこと”が楽しいんです。そうした自分だけの世界感を作っておられるシェフって、今都会じゃなくて地方に多くなってきてると思います。

僕は生まれも育ちも東京ですが、その場所で独自の世界観を打ち出すのはなかなか難しかったんです。でも、こうして能登に来て、こちらの濃厚な文化に出会えた。移住してきてからさまざまな食材や人との出会いがありましたが、学べば学ぶほどまだまだ深いものがある。キリのない世界だと思います。能登に根付く優れた生産者や作家さんたちとの共同体でこれからもやっていきたいですね。

 

事前取材と打ち合わせ

1月28日吹雪の中、能登島の高農園さんの畑を見ながらレシピの構想を練りました。

 

         

 

 

LE GRILL DOMINIQUE BOUCHET KANAZAWA
吉田 能
TAHASHI YOSHIDA

Profile
埼玉県生まれ。服部栄養専門学校卒業後、丸の内ホテル「ポム・ダダン」でキャリアをスタート。4年後に渡仏し「ドミニク・ブシェ」で働く。帰国後に「ピエール・ガニェール」を経て、「ドミニク・ブシェ トーキョー」へ。「レ・コパン ドゥ・ドミニク・ブシェ」のシェフを経て、2017年から「ル・グリル ドミニク・ブシェ カナザワ」のシェフとして腕をふるう。
http://www.legrill.jp/

魚が親しまれる石川であえて
フレンチ×肉の新境地を開拓

–フランス料理を志したきっかけは?

小学生のとき、親にフランス料理店に連れて行ってもらったんですが、そこで食べた魚料理が非常に美味しかった。実は僕は魚が嫌いだったんですが、嫌いなものをこんなに美味しくするフランス料理にすごい魅力を感じたんです。

–ドミニク・ブシェとの出会い、その後のかかわりは?

食べ歩きを楽しもうと訪れたフランス・パリで「ドミニク・ブシェ」の料理を味わい、そのおいしさに感動。当時、伝統的なフランス料理のソースを探求したいと思っていたので、「まさに自分が求めていた味だ」と。その場ですぐシェフに会い、ちょうど空きがあったので、働くことになりました。そこで1年働いた後、帰国して、今度は「ピエール・ガニェール」へ。シェフがとても前衛的な料理を出す方として注目されていたので、伝統とはまた違ったジャンルも学びたくなったんです。

その後、「ドミニク・ブシェ トーキョー」がリニューアルオープンするにあたり、また一緒にやらないかとお声かけいただいたので、ぜひ、ということに。東京の「レ・コパン ドゥ・ドミニク・ブシェ」というビストロの立ち上げを任された後、金沢のお店のお話をいただきました。

–「ル・グリル ドミニク・ブシェ カナザワ」のコンセプトは?

アメリカで最もグレードの高いUSプライムのお肉と、ドミニク・ブシェのソースや前菜を融合させたハイグレートな肉料理を提供するというもの。もともと石川では魚料理の美味しさに定評がありますが、あえて肉料理というのが面白いし、挑戦でもあったと思います。

当店の料理を味わったお客様は「和牛じゃなくてもこんなに美味しいのね」と言ってくださいます。やわらかくて食べやすい和牛に対して、アメリカのお肉はもっと歯ごたえのあるダイナミックな味わいに魅力があるんです。そうした今まであまりなじみのなかった料理を知っていただきたいというのも当店の目的です。

–石川の印象はどうですか?

それまでは東京とパリしか知らなかったので、開店前に金沢に下調べに行き、落ち着いたいい街だと感じましたね。お店をオープンしてから、日々お客様と接していると、自分たちの風土を大切にされている印象がすごく強い。自分の育った町を愛されているなと。例えば能登は豊かな自然、金沢は兼六園などの歴史的文化。魚や野菜などよい素材が多いので、食文化にも自信を持っておられますね。

僕自身はこちらでの生活にも慣れ、犀川沿いの散歩が楽しみになりました。苦手だった魚も克服し、寿司が好物のひとつに。地元で活躍するシェフとの交流も生まれ、みなさん意識が高いと感じますね。石川の土壌をとても大切にしながら、日々努力されている。さまざまな方から受けた刺激をもとに、これからも地元の方々に喜んでいただけるものを追求していきたいです。

 

 

器は第 11代大樋長左衛門氏の大樋焼、輪島塗りの桐本 泰一氏がこの日のために食に彩を添えます。

辻口博啓氏と意気込みを語る

輪島キリモトさんより輪島塗りの漆器のアレンジや商品の展示を行っていただきます。

 

写真は当日のレシピやアイテムと異なります。

 

高農園 高さん

平田シェフ+吉田シェフ

第11代大樋長左衛門氏

輪島キリモト

supported by  YOSHITA DESIGN PLANNING

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